腰痛の治療といえば、薬やリハビリ・手術などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
しかし最新の研究では、身体に一切触れない治療法の有効性が実証されつつあります。
今回ご紹介するのは、まさにその最先端を行く研究です。
(ハーバード大学医学部)
(Psychophysiologic symptom relief therapy for chronic back pain: a pilot randomized controlled trial)
18歳から67歳までの、明確な痛みの原因(悪性腫瘍や感染症、神経障害など)が認められない、
慢性腰痛を抱える人たちを対象にPSRT(心理生理学的症状緩和療法)を実施したところ、
・通常の腰痛治療による半年後の痛みの消失率は、16.7%だった。
・PSRTを実践したグループの痛みの消失率は63.6%だった。
出典:Donnino MW et al. “Psychophysiologic symptom relief therapy for chronic back pain:a pilot randomized controlled trial”Pain Rep. 2021 Sep 23;6(3):e959.doi: 10.1097/PR9.0000000000000959.
Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34589642/
実に、通常治療に3.8倍もの差をつけ、圧倒的な数字を叩き出しました。
しかし、こう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
なんだよ60パーしか治んなかったのかよ!
実は、この研究はランダム化比較試験という医学的に最も信頼性が高いとされる厳しいルールの下で出されたデータです。
実際、ごまかしが一切効かないこの検証で通常治療が16.7%にとどまったことを見ると、63.6%という数値がいかに驚異的かお分かりいただけるかと思います。
では、研究で行われたPSRTの具体的な方法について詳しく見ていきましょう。
PSRT(心理生理学的症状緩和療法)
ハーバード大学の教授であり、ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターという病院で、
救急・集中治療に携わる医師であるドンニーノ教授らは、PSRTという12週間のプログラムを実施しました。
なんとこのプログラムでは、薬はもちろん理学療法や整体、マッサージといった物理的な施術は一切行いません。
最初の4週間でやることは、次の3つです。
腰痛の原因は必ずしも腰にあるとは限らず、脳の誤作動で発生しているケースも多いという最新の神経科学に基づく痛みのメカニズムを学びます。
そうした知識を入れるのと共に、自身の痛みの矛盾についても考えます。
・運転中はひどい腰痛を感じるが、渋滞時のみに限ったものである
・座っている時は痛みを感じるが、スキーでリフトに乗っている時は痛みを感じない
・職場に⼊る時は痛みがひどくなるが、出る時は痛みを感じない
など
腰の構造に問題があるなら、状況に関わらず常に痛むはずです。
しかしこのように、ストレスや環境で痛みが変化するという事実こそが、心理的な要因が痛みに深く影響しているという何よりの証拠になります。
まずは、物を拾うために屈むなど、痛みが発生する典型的な状況をイメージします。
多くの場合、その想像だけで痛みが発生するため、ここでも体の損傷よりも心理的な要因が痛みに影響していることを自分自身で証明することに繋がります。
そして、痛みが出る状況をイメージ→自己鎮静の言葉を唱える(この痛みは心理的な要因が関係しているなど)ということを繰り返します。
そのうえで、痛みを恐れて避けていた動作を少しずつ再開します。
過去のつらい経験、日々の人間関係のストレス、あるいは、完璧主義や人に気を遣いすぎるといった自分自身の性格がもたらすプレッシャーなど、
無意識に抑え込んでいるネガティブな感情をひたすらノートに書き出します。
そして後半の8週間は、慢性痛ケアのために作られたMBSRという瞑想プログラムを実践します。
研究結果
冒頭でもふれた通り、この研究で行われたプログラムは次のような驚異的な結果を出しました。
・通常の腰痛治療による半年後の痛みの消失率は、16.7%だった。
・PSRTを実践したグループの痛みの消失率は63.6%だった。
さらに興味深いのは、日々交通事故などの物理的な外傷を最前線で治療している救急の医師が、慢性腰痛に対して体ではなく脳とメンタルへのアプローチでこれほどの成果を挙げたという事実です。








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