以前、僕が腰痛に悩んで整体に通っていた時のことです。
施術者から、こう言われました。
あ~姿勢がわりいから、そりゃ腰痛になるよ
あ~骨盤が歪んでるからですね~
骨格・体のバランスが崩れているから痛みが発生するのだ――
という理論のもとあのような説明が展開されているわけですが、実は姿勢の良し悪しと腰痛との間に因果関係は立証されていません。
こんなことを言うと、次のように思われる方もいらっしゃるでしょう。
は?じゃあ今まで骨盤矯正に使ってきた時間と金はなんだったんだよ!
姿勢が悪けりゃ腰痛くなるに決まってんだろ!いい加減なこと言うな!
しかし実際には、姿勢の悪さ=腰痛の原因とする考え方には、否定的なデータも多く報告されています。
(イェール大学医学部)
An epidemiologic study of the relationship between postural asymmetry in the teen years and subsequent back and neck pain
大学生を対象に、
・肩の高さの左右差
・背骨の左右への曲がり(側弯)
・腰骨の左右差(骨盤の歪み)
などの姿勢の非対称性(左右の歪み)を測定した。
その後、約25年間にわたって首・背中・腰の痛みの発生について追跡調査を実施した。
結果、体の歪みの有無と痛みの発生には明確な関連性は認められなかった。
出典:Dieck GS et al. “An epidemiologic study of the relationship between postural asymmetry in the teen years and subsequent back and neck pain.” Spine (Phila Pa 1976). 1985 Dec;10(10):872-7.
doi: 10.1097/00007632-198512000-00002.
Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2938272/



この研究を行ったのはイェール大学医学部のチームで、論文は整形外科・脊椎の研究において世界トップクラスの権威を持つ医学誌Spineに掲載されました。
約25年という圧倒的な時間をかけて導き出された、非常に信頼性の高いデータです!
さらに、こちらの論文でも興味深い研究結果が報告されています。
(ノース・ジョージア大学理学療法学科)
Relationship between mechanical factors and incidence of low back pain
600名を対象に、
・腰骨の歪み
・骨盤の傾き
・両足の長さのバランス
などの身体的要素を測定し、腰痛の発生状況について調査を行った。
結果、これらの要素と腰痛の発生には明確な関連性は認められなかった。
出典:Nourbakhsh MR, Arab AM. “Relationship between mechanical factors and incidence of low back pain.” J Orthop Sports Phys Ther. 2002 Sep;32(9):447-60.
doi: 10.2519/jospt.2002.32.9.447.
Available at: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12322811/
25年という長い歳月をかけた追跡調査や、600名を超える規模の測定。



これだけ綿密に調べてもなお、姿勢の良し悪しと痛みの発生には、明確な関連性は認められなかったのです
そもそも、人の体は左右非対称なのが自然なのかもしれません。
背骨が左右に軽く曲がっていたり、骨盤が歪んでいるのも、生まれつきの普通の状態であることも考えられます。
また、近年の医学的見解では姿勢が悪いから痛みが発生するのではなく、
痛みがあるから体を守ろうとして姿勢が悪く見えてしまうのではないかという逆の因果関係である可能性も指摘されています。
※医学的な判断が必要な場合もありますので、まだ医師の診断を受けていない方は必ず医療機関を受診してください。
自分を責める必要は全くない
これほどエビデンスレベルの高い研究において、体の歪みと痛みの間に明確な因果関係は確認されていない。
それにもかかわらず、いまだにこう自信満々に語る施術者は少なくありません。
体の歪みが痛みの原因だ!
僕自身も過去に整体に通っていた際、このような経験をしたことがあります。
施術後に「痛みの方はどうですか?」と聞いていただくので、状況があまり変わらないことを伝えました。
すると、施術者の顔からスッと表情が消え、真顔でこう告げられます。
何が痛みの原因か理解してますか?
あなたの日々の姿勢・体の使い方が悪いからです。
それを変えるために行動してますか?
患者の痛みが変わらないと不機嫌になり、それを態度に表してしまうくらい耐え難いのなら、最初から聞かなければいいのではないでしょうか?
そして何より、その「姿勢・体の使い方が悪いから痛みが発生するのだ」という主張自体が、客観的なデータが一切ない、ただのその人の個人的な感想でしかありません。
さらに言ってしまうと、医師免許を持たない整体師が痛みの原因を断定する行為は診断にあたり、これは明確な医師法違反です。
もちろん、全ての整体師がこうだと言っているわけではありません。
しかし中には科学的な根拠が乏しいのに、施術を受けるたびに、腰が痛いのはあなたの姿勢が悪いからだと逆ギレしてくる施術者もいる。
これは、最新の科学的知見が現場にアップデートされず、昔ながらの古い常識がそのまま定着してしまっている業界の構造的な問題でもあります。
あなたも、整体などに通って施術を続けても長引く痛みに対して、こんなふうに思い悩んでいませんか?
治らないのは、自分がだらしないからだ...
良い姿勢を保てないからだ...
このようにご自身を責め続ける必要などまったくないのです。
なぜなら、ここまでお伝えしてきたように、そもそも姿勢の悪さ=痛みの原因という前提そのものが科学的根拠に乏しいからです。
※医学的な判断が必要な場合もありますので、まだ医師の診断を受けていない方は必ず医療機関を受診してください。
しかしそうなると、当然の疑問が湧いてきますよね。
姿勢の悪さじゃないとすれば、痛みの原因は一体何なんだよ!
では一体、痛みの背景には
何が関係しているのか?
骨格や姿勢といった外側のハードウェアへのアプローチを続けても解決しない場合、もう一つ目を向けておきたいのが内側で動いているシステムです。
知らず知らずのうちに限界を超えて蓄積したプレッシャーや、無意識に抑え込んでしまった感情といった心への負荷。
実は、その処理しきれない強烈な感情の負荷から自分自身を守るために、脳があえて体に痛みを発生させ、そちらに意識を逸らしているのではないかと考える新しいアプローチが存在します。
それが、TMS理論(Tension Myoneural Syndrome/緊張性筋神経症候群)です。
(Tension Myoneural Syndrome/緊張性筋神経症候群)
無意識下に抑圧された強烈な感情から自分自身を守るために、
脳が自律神経系を通じて血流を制限し軽度の酸素欠乏を引き起こすことで、あえて痛みを発生させているのではないかという考え方。
つまり、痛みそのものは決して気のせいではありません。
強烈な感情による苦しみを感じさせないよう、脳が防衛反応によって引き起こす物理的な生理現象として捉える理論です。
この脳の誤作動とも言える心のはたらきが関係していると考えられる腰痛の仕組みと、痛みを根本から見直すための実践的なセルフケアの詳細は、以下のページに詳しくまとめました。



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